今から30年前、大きな団地で子育てをしていた時の話。
1フロア12戸で12階建て。住居は2階から12階までなので、1棟132戸。それが2棟建っていた。
子ども会も大人数。行事はいつも大にぎわい。
中でも同じ棟にママも子どもも年齢が近い家族がいて、いつも誰かの家で遊んでいた。
子どもたちが小学校に行くようになると毎日の宿題やお勉強に頭を悩ますことになった。
毎日、公園でおしゃべりをしながら、「どうしたら怒らずに宿題をさせられるか?」ということをテーマにあれこれ話をする中から生まれたアイデアが『寺子屋勉強会』。
数家族の子どもたちが誰かの家に集まり、宿題や勉強をする。面倒を見るのは交代でママたちがそばにいて、分からないところなどを教える。
できるだけわが子じゃない子に接するようにすると、怒らずに教えられる。
わが子に教えることがあっても、自宅で向き合っている時と違い、他人の目があるので、いきなりカッとして怒鳴るということにはなりにくい。
子どもたちも他の子が頑張っている姿を見ているので、その時間はなんとなく勉強をするようになった。
ある日、小2の男の子がくり上がりのある足し算をやっていた。算数がとても苦手な子。
私は他の子の相手をしていたけれど、なんとなく気になってその子の様子も見ていた。
すると突然「あ~、僕もうくり上がりたくな~い。」というまさかの発言。
初めて聞く衝撃の言葉。「くり上がりたくないって…。」と心の中でつぶやく。
もし、わが子と自宅で向き合っていたら、一気に怒りに火がつき、「はぁ~?バカなこと言ってないで、まじめにやりなさい!!」とか言いそう。
その子のお母さんの顔が目に浮かぶ。でも今、横にいるのは、お友だちのお母さん。
そのお母さんもわが子に対しては結構ガミガミ言うタイプ。どうなるのかと見守っていると、そのお母さんがこう言った。
「そこをなんとかくり上がっていただくわけにはいかないですかね…。」とかなんとか。
昔のことなのでうろ覚えのところはあるが、おおむねこんな感じ。
思わず笑ってしまった。
そして思った。「いいな、この感じ。」
この寺子屋勉強会がいつまで続き、どんないきさつで終了したのか定かではないけれど、子どもが小学生だったころの楽しい思い出。
(文責 鶴田 明子)
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