ある雨の日の地下鉄。
3列並んだ優先席にママと3~4才位の男の子が座っている。
しばらくすると、男の子が2つの席にまたがるように占領。
「そんなワガママしないの!他の人が座れないでしょ!」とママが諭す。
男の子には何も聞こえていないかのように見事にスルー。
周りの目を気にしてなのか、だんだんママの声が大きくなっていく。
ママは躾けようと一生懸命なのだろう。
でも男の子は相変わらずスルー。
昼間なので周りに立っているのはほんの数人だけ。
しかも優先席に座るべき人は見当たらない。
「人も少ないからそのままでも大丈夫よ」と、ママに声かけようかなぁ。
でも、それじゃあママを慰めるどころか恥をかかせてしまうかも・・・
そうだ!私が座ろう!
「ねぇ、ボクのお隣に座っても良い?」
男の子はスーッと席を譲ってくれた。
「お席譲ってくれてありがとう。嬉しかったぁ」
それを見ていたママは・・・
「ちゃんとお席譲れて偉かったね~」「良い子だね~」「お利口だったね~」
怒っていた時間を打ち消すかのように、笑顔で褒め言葉の嵐。
男の子は照れたような笑顔になってママに寄りかかる。
「子どもは何も分かっていない」と、大人は決めつけてしまうけど、
子どもなりに状況を見ているのだろう。
本当のワガママだったら席は譲らないはずだもの。
外は土砂降りだったけど、ママと男の子の笑顔に心は晴れやかだった。
文章 佐藤 由美
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