
寒波到来で平地でも雪が積もった冷たい朝、その小学校に行くと特別支援学級の先生から、最近ずっと行き渋って学校に来れてない子(4年生の男の子)がいるから、ちょっと会いに行ってもらえないかとご相談があった。ここは登校支援員の出番!とその子のおうちに向かうことに。
去年の夏休み明けに、他県から福岡に引っ越してこられたご家族。
以前通っていた小学校は20数名の小さな小学校で、周りは幼い頃から家族ぐるみでお互いの事をよく知っている子ばかりで、楽しく過ごしていたらしい。
ところが、転向してきた小学校は緑豊かな田園風景が広がる田舎にある校児童は280人位の小規模校とはいえ、その子にとっては以前と比べると10倍もの人数だから、数に圧倒されるのもわかる。
子どもにとっての”転校”って、きっとそれまでの人生で突然襲ってきた一大事で危機的な出来事だろうと思う。
思い返せば20年ほど前、我が家も子どもたちが小4と小2で今のところに引っ越してきた時、下の子にチックの症状が始まった。
その姿を見て、すごく心配になって育児書を読んだり先輩ママに相談しに行った。
そっと見守っていたら、そのうち治るから、と言われて気になりながらもそうしていたら、忘れた頃に症状が消えていた。新しい小学校に来て相当のストレスがあったのだろう、なんとか乗り越えてくれてホッとした。
さて、家庭訪問をする時、話の取っ掛かりに何か無いかと考えて、咄嗟に思いついたのは、その小学校の玄関にいつも置いてある絵本。そこから適当に5冊選んで持って行った。
お母さんに呼ばれて渋々玄関に出て来たその子は、背中を丸めて下を向いていた。
「おはよう!」と声をかけても、頷くだけ。
何を聞いても答えるのはお母さん。隙あらば物陰に隠れようとしていた。
そこで、「今日は学校に連れて行こうと思って来てるんじゃないよ。ここに絵本を持ってきたから、この中から〇〇君が興味があるのを読んであげたいんだけど」と言うと、ちょっと関心を示したので、1冊ずつ広げて中を見せて紹介。
1冊目は、選書のとき最初に私の目に止まった可愛いペンギンの絵が描かれた表紙の『タンタンタンゴはパパふたり』。毎朝見ているインスタの南極のペンギンも見せて、「私はこれに元気をもらっているんだよ〜」と付け加えて。(^^♪
5冊全部を紹介し終えて、
「さあ、どれがいいかな?」と聞くと、彼が指さしたのはペンギンの絵本!!
それは、NY.セントラルパークにある動物園のペンギンハウスでの実話がもとになった絵本。
ペンギンの同性ペアがネグレクトされた卵を温めて雛に孵す心温まる物語。
読み聞かせの後、「ペンギンを動物園で見たことある?」って聞くと、「水族館で見た」って、初めて言葉を発した!!
これってコミュニケーションの糸口なのかな?嬉しい♡
これからこの子とどんな対話ができるようになるかな…
あれこれ考えながら戻ると、小学校の運動場には走り回って雪合戦を楽しんでる子どもたちの姿。
あの子がこの中に交じって遊ぶようになるのはいつの日だろう、きっといつかそんな日が来ると信じて転校生の気持ちに寄り添っていこう。
(文責:石橋 晴子)
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