推薦図書 VOL.10
がちょうのペチューニア
ロジャー・デュボアザン作 松岡享子(まつおかきょうこ)訳 冨山房
ロジャー・デュボアザンは、動物たちを主人公した物語をたくさん書いています。中でも農場を舞台にした物語は、同じ名前の動物があっちにもこっちにも登場していて、とても親しみを持ちます。作者が大好きな私は、彼の絵本を集めて子どもたちに読んであげていました。
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ペチューニアはある日1冊の本を見つけます。「『ほんをもち、これにしたしむものは、かしこくなる・・・・』って、パンプキンさんが、ビルに言ってたわ。じゃ、つまり、あたしがこのほんをもってだいじにしたら、あたしだってかしこくなるってわけね。そうすれば、もう、だれもあたしのこと、おばかさんだなんていわなくなるわ」
そう思い込んだペチューニアは、本をいつも持っていたので、自分がとてもかしこくなったと思い込み、得意になって困っている仲間たちを助けようと相談にのるのですが、結果は・・・・。
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読み手が主人公に同一化して物語を味わう体験は、子どもの成長にとって心の栄養になります。動物たちが主人公の絵本は多いのですが、ロジャー・デュボアザンの描く物語は、お互いにそれぞれの存在を受け入れており、迷惑を感じることがあっても、助け合って一緒に生きています。その様子が人間の社会と同じで共感できます。また、ユーモアにあふれていて、愉快で、押しつけでも教育的でもなく書かれているところが、子どもたちに自然に受け入れられると思います。
子どもたちは、ペチューニアになって、得意になったり、仲間を助けて誇らしくなったり、がっかりしたりしながら、それでも前を向いて歩く姿に引っ張られていくことでしょう。
作者は子どものために絵本を書いたそうですが、愛するわが子に贈る言葉としてあふれる愛と願いを感じます。
いつのひかほんとうにかしこくなれるようにー
そうなれば、きっとみんなをしあわせにしてあげられるでしょう。
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