
Aさんは高校2年生。知的障害があり、自分の予定と違う事が起こったり、やりたいと思っていたことが出来なかったりすると、ふさぎ込んだり大声で泣きわめいたりするという特性があります。
ある日ふとしたことで泣き出しそうになりましたが、その時カバンの中からリングで留められた10枚くらいのカードを取り出しました。Aさんはそれらを1枚1枚めくって眺めていましたが、そのうちに少しずつ表情が和らぎ笑顔も出て来ました。
カードはAさんの大好きなタレントやスポーツ選手の写真が丁寧にラミネートされたものでした。学校の先生が作ってくれたのだそうです。
「ああ、なるほど…これがAさんの救急箱ね…」と、私は心の中でつぶやきました。
7月8日のおしゃべりカフェでは、絵本『カラーモンスター きもちのきゅうきゅうばこ』が紹介されました。
ある女の子が「イヤ」と言えない悶々とした気持ちの治療のためにカラーモンスターを訪ねます。モンスターは救急箱の中の様々な道具や方法を使って、女の子が自分の気持ちに気づき表現できるようにしてくれ、さらに「自分の救急箱を持っておくといいよ」と教えてくれます。
絵本を見た後、感じたことや考えたことなどを皆で分かち合いました。
私たち大人にも、もちろん救急箱は必要です。
好きな飲み物やアロマでホッとする、散歩、入浴、草取り、塗り絵、鍋を磨くなど様々な経験やアイディアが出ました。体を動かすことは良い気分転換になるようですね。
対子どもではどうでしょうか。
ある人は、子どもが気持ちがふさいで何も話さない時に、指人形で子どもの肩越しに「ねぇねぇ、どうしたの?」と尋ねると、子どもが指人形に向かって「あのね…」と話し始めたという経験を教えてくれました。親の方も人形を介して聞くので落ち着いて聞くことができて良かったそうです。
またある人は、子どもが友だちからいじめられ大変なショックを受けていた時のことを話してくれました。始めは子どもの気持ちを聴きながら、それを紙に書いていたのですが、そのうちに子どもが自分で書くようになったのだそうです。
ある夜、子どもが急に布団から出て机についたかと思うと何かを一生懸命に書き始め、しばらくして「ああ、スッキリした~」と言って寝たこともあったそうです。モヤモヤした想いを吐き出せたのでしょうか。
このような話を聞いていると、子どもと一緒に救急道具を探すことも子育ての大事な仕事なのかも知れないなあと思えてきました。
そして最後には、「こうやっておしゃべりカフェで様々な想いや経験を屈託なく語り合う事もまた、私たちにとっての大事な救急箱ですね!(laugh)」という話で落ち着きました(笑)。
ということで、来月8月のおしゃべりカフェに是非ご参加くださいね! 12日火曜日の10時から12時、担当は石橋晴子さん、場所は福岡市天神のワンビル6階です。5階までエレベーターで、そこから6階へはエスカレーターを使ってください。緑がある吹き抜けの、清々しく気持ちの良い場所で、嬉しいことやお悩みなどもわいわいとおしゃべりしましょう。皆様のお越しを心からお待ちしています。
(文責:野口 紀子)
この記事へのコメントはありません。