日が沈むと虫の音も大きく聞こえ、秋の気配を感じます。今年の夏は酷暑続きで泣きたくなるほどでしたが、皆さまはどのようにお過ごしでしたか?
私のこの夏一番の思い出は線香花火を楽しんだことです。
幼い孫たちと花火をしたい、せっかくだから日本製を探そう、という事で調べてみると、意外と近場で購入することができました。今や日本で製造される数少ない線香花火。まずはパンフレットをきちんと読み込み、製造方法や作品の名前など知識を入れてから火を点けます。ああ、いいなあ、この光!
なんと、一度火を点けたら4段階の燃え方を楽しめるのです。それも「つぼみ」「牡丹」「松葉」「散り菊」と名前がついているのですよ。ほんの十数秒間の儚い花火にこんな美しい名前を段階ごとに付けているなんて・・・ああ、日本人だなあ、こういうところ。小さなものにも愛おしさを感じる心なのですね。
線香花火はささやかで儚いけれど立派な芸術品。職人さんの技術と心意気を感じます。そして私たち消費者はそれを存分に楽しませてもらうのです。あまりの美しさにうっとりしながら過ごすわずかな時間。心が洗われる感じすらします。
幼い子どもたちと花火をする時には余計なうんちくは抜きにして、ただただ無心に楽しむと良いと思いますが、大人としては、花火の種類や名前、どのように作られるのかなどの知識も得て味わうと、より楽しさが増すと思います。その味わい深さが、結果的に理屈ではなく幼い子どもにも伝わるのだと思いますし、それが文化の継承ということなのだと思います。大人がアートを愛でる心を持たなければ子どもの心も育たないなあ、と花火の火を見つめながらそんなことを考えていました。
空気が澄む冬の花火も見ものだそう。また楽しもう!
(写真は3段階め「松葉」)
(文責:野口 紀子)
この記事へのコメントはありません。