風さん

吉田有子

「風薫る五月」という言葉はもはや死語になってしまったのかと憂いたくなるほど、5月に入ると夏日が増えて来ますね。寒さを脱したかと思うと途端に夏! あるいは、昼は冷房をつけ夜は暖房をつけるということもあります。寒暖差の激しい折、体調管理には気を付けたいですね。

 

 そして昔であれば、窓を開け放して清々しい空気を胸いっぱいに吸い込みたいはずの5月ですが、最近はPM2.5 だとか黄砂だとかで空気がきれいではないので、小さい子を外に出すのも気を遣いますね。おちおち風に当たることもできないこの頃です。

 

小さい子どもは風が大好きです。私の子どもが赤ちゃんだった頃は、私たちはアパートの4階に住んでいましたので、今のようにエアコンも無く、窓を開けていれば心地よい風が吹き抜けていったものでした。睡眠から目覚めた子どもが布団に仰向けになったまま機嫌よく、吹き抜ける風と遊んでいたのを思い出します。自分の小さな手をかざしたり、風を目で追ったりしていたのです。楽しそうな子どもの様子を見て、「子どもって本当に風が大好きなんだなあ」としみじみ感じたものでした。

 

風さんだってお手てがあるよ 

ほんとだよ

お窓をトントン ほらね 

叩いているよ

 

 風さんだってお目めがあるよ 

ほんとだよ

 

絵本をパラパラ ほらね 

ながめているよ

 

(童謡「風さんだって」の1番と3番)

 

私が小さい頃から大好きなこの歌をわが子の耳元で、そっと歌ってあげたものでした。今思い出してもその平和で幸せな時間と空間がよみがえってきます。今でもその時の風を感じることができるからでしょう。そして、子どもを取り巻くそのような環境こそが子どもの心を豊かに育てていくのでしょうね。

 

 無防備では外の風に当てることのできないこの頃ですが、できるだけ空気の奇麗なところを探しては、子どもたちに自然な風を当てて風さんと遊ばせてあげてほしいと思います。自然と交わることが子どもの心の栄養には欠かせませんから。

(文責 野口 紀子

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