「怒らないから言って」の罠

先日、地域の役員として ある会議に出席したときのことです。

その会のリーダーは、とてもヤル気に満ち溢れていて、冒頭でこのように仰いました。
「みなさんには、どんどん意見を出してもらいたいと思っています。その中から地域のために何ができるか、どう出来るかを探っていきたいので、色んなご意見をたくさん頂戴したいです。」

その言葉に背中を押され、参加者からは様々な視点で意見交換がなされました。ところが、少し雲行きが怪しくなってきたのです。リーダーの考えとは違う意見が出た瞬間、リーダーはこう言いました。

「それはちょっと違いますね」

そう言って、スパッと意見を切り捨ててしまったのです。
その後も、ご自身の想定と違うアイデアが出るたびに、バッサリ。私もバッサリ切られた一人でした。

最初は活発だった会議が、だんだんと静かになり、意見を言う人は誰もいなくなってしまいました。

会議の後、モヤモヤを抱えた数名と
「バッサリやられたね〜」
と話をしました。

「何でも言っていいと言いつつ、結局違うと共感もなく切り捨てるって…
それなら最初から『私はこうしたいから、みんな手伝って』って言われた方が、よっぽど気持ち良いよね。まぁでも、本人は気づいてないからどうしようもないか」
と。

この、口では「〇〇していいよ(どんどん意見を出して)」と言いながら、実際は「〇〇してはいけない(私の意見と違うものは認めない)」という矛盾したメッセージで相手を縛る状態を、心理学では「ダブルバインド」と言います。

これを受けると、相手はどう動くのが正解なのかと「正解さがし」になったり、思考停止状態になったりなど、心身への悪影響が出るのです。

信頼していたリーダーだっただけにガッカリしましたが、わが身を振り返させられました。

「何でも怒らないから正直に言いなさい」と言っておきながら、
子どもが正直に話したら「なんでそんなことしたの!」と結局怒ってしまう。

「自分で決めていいよ」と言いつつ、
子どもが選んだ服や進路に「それは変じゃない?」と口を出してしまう。

これも立派なダブルバインドです。
親に悪気はなくても、子どもは「結局、親の正解を当てなきゃいけないんだ…」と心を閉ざし、自分で考えるのを止めてしまいます。

「自由にしていいよ」というからには、自分と違う意見にも「あなたは、そう思うんだね」と一旦共感して、受け止める器を持ちたいものですね。

大人同士の苦い経験でしたが、言葉と行動を一致させることの大切さを改めて学んだ出来事でした。
矛盾したメッセージを送らないように心がけたいですね。
(文責:魚永 久子)

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